黒執事小説『鳥籠エピローグ』黒執事「鳥籠」エピローグ その夜、シエルは夢を見た。不思議な夢だった。 巨大な大きな鍋の中にチョコレートがグツグツと煮え ている。美味しそうと思って鍋の中をのぞいた瞬間、 シエルは鍋の中に落ちてしまった。溺れそうになった シエルは慌てて泳いだが、チョコレートがヌルヌルと 肌にまとわりつき、体が沈んでいく。 「セバスチャン!」 と、シエルが叫ぶと、ひのきの棒が差し出された。シエル はそれを必死につかんでしがみつくと、ひのきの棒は鍋 から引き上げられた。助かったと思ったのも束の間、巨大 化したセバスチャンがにんまりとシエルを見つめていた。 いや、セバスチャンが巨大化したのではなく、シエルが 小さくなっていたのだった。ひのきの棒と思ったのは 爪楊枝だった。セバスチャンは嬉しそうに爪楊枝を口元に 運んで、まずはペロッと全身チョコレートで濡れている シエルを舐めあげた。そして、美味しそうに大きな口を 開けてシエルを食べてしまった。 「うわあああ~」 シエルは目が覚めた。自分が食べられる夢なんか初めて 見た。なんでこんな夢を見たんだろう。チョコレートプレイ のせいなのか・・・あのドロドロとしたチョコレートが肌に まとわりつく感触が忘れられない。手枷足枷で食台に鎖 で縛りつけられ、体中にチョコレートを塗りたくられた。 シエルは自由を奪われた形で体中を舐め上げられ、貪り つく唇にヌルヌルとした舌の感触に翻弄された。人として 扱われることのない屈辱と食べられるかもしれないという 恐怖がシエルを侵す。もう、セバスチャン以外誰にも 触れられたくないはずだったのに・・・もし、体中をヌメヌメ と這いまわる舌がセバスチャンだったら・・・そう考えた だけでシエルの身体に熱いものがこみあげてきた。 シエルはそっと自分の身体に手を伸ばした。セバスチャン に舐められている自分を想像して触れてみた。 「あっ」 シエルは思わず小さな吐息を洩らした。チョコレートに 溺れるが如く快楽の波に溺れてシエルは自らを慰める のはいけない事だと分かっていても手の動きを早めた。 「あ、ああ~セバスチャン」 セバスチャンの名を呼び、絶頂を迎えようとした時、 シエルの前にセバスチャンが現れた。最初、これも夢 なのかと思ったが、現実だった。セバスチャンは名前を 呼ぶと何処にいようと駆けつけて飛んでくるのだった。 「坊ちゃん、何をしていたのですか?」 セバスチャンはニヤリとシエルを見て言った。 「いけない子だ。」 シエルは顔を真っ赤に染めてうろたえた。 「さっき何をしていたのか私にもう一度見せてください。」 セバスチャンがシエルの耳元で囁いた。そして、シエル を押し倒した。 「はしたない。こんなに濡らして・・・」 セバスチャンがシエルを握りしめた。 「自分でするのとどちらが気持ち良いですか?」 「ばか。」 シエルは目を閉じてセバスチャンにしがみついた。熱い 口づけとともにセバスチャンがシエルの中へ入ってくる。 「ああああ~」 シエルは痛みに顔を歪ませて歓喜の声をあげた。赤い 蝋燭の炎のように揺れ動く快楽にシエルは翻弄された。 熱く激しく燃えて炎に呑み込まれる。闇の中に燃え上がる 炎のように快楽はシエルを天へと導いて行く。絶頂を 迎えた後もなお、口づけを交わすセバスチャンにシエルは 蕩けてしまった。このまま本当に食べられてしまいたい。 シエルは心からそう願った。悪魔に身も心も捧げる背徳 の夜は闇に包まれた炎のようにいつまでも燃え続けた。 (完) |